無間の鐘(かね)
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ある時大坂屋の旦那様が京へ上って無間の鐘をつきました。そんな鐘が今どこの寺にあるのかわかろう筈はないが、この鐘をつくと一代の長者にはなれるが、そのかわり死んだのちの先は無間地獄のドン底へ行くものときまるのでした。

無間地獄というのは八大地獄の中で一番重い、それこそ限りない責め苦を受けなければならぬ境涯といわれますから、流石の旦那様も迷いました。鐘をつくか、つかぬか、暫くためらいましたが、ままよこの世が身上(しんしょう)だ、死んだ後はまたその時の風が吹くと、現実張りの旦那様は思いきって鐘をつきました。

そのお陰か財産はめきめきふくれ、数年もたたぬうちに地方きっての富豪となり、栄華の一生に酔いました。

だが、その後に忍び寄るものは死と無間地獄です。旦那様はひそかに怯え、おののきました。でも今更どうにもなりません。とうとう無間地獄に落ちました。

今も地の底からかすかな鐘の音が聞こえてきます。それは大坂塔婆の下あたりからです。