むかしから信濃川はあぱれ大川と言って、たびたび大洪水に見舞われてきた。
その信濃川のほとりに、仏山を背にして岩方村があり、その前方の信濃川との間に二箇村(にかむら)と言う村があった。二箇村の庄屋はたびたびの信濃川の水害で村の作物がながされるので大変困っており、なんとか村の人々を救う方法はないものかと考えた末に信濃川の鮭を捕らえて村人の生活を救いたいと考えた。
ある日、庄屋が一日の仕事を終えて寝床に入り、そのうちに昼間の疲れでグッスリと眠りについた。その夜夢の中に大きな大きな信濃川の鮭が現れて、「私はこれから京都にのぽるのだが、私の通る道に網を張ったり、私を捕らえたりすると罰があたり村が亡びるであろう。くれぐれも私の通る道を邪魔しない様に」と言い残して夢枕から消えていった。
早朝から目がさめた庄屋は困ってしまった。鮭をとって生活をたてようと考えていたところ昨夜の夢のこと、いろいろと村の人と相談をしましたが、結局鮭を捕ることになり、庄屋は夢の中の鮭の言う事を無視して信濃川の鮭を捕って町へ売り、生活の助けにした。
それから幾日かしていつものように庄屋は村の人々と一緒に川に網を張って鮭を捕りました。しかしそれからというものは、なぜか二箇村はだんだんとさびれて次から次へと一軒ずつ他所へ移転していき、ついに村はなくなった。
現在岩方村には二箇村から移住したと言われる家が一軒だけ残っているという。また西蒲原郡巻町の二箇村は岩方村の二箇村から移住してきたのだと言われている。
昔の二箇村のあった位置は現在の信濃川の水流に浸っており、その位置さえ忘れられようとしている。
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