「からす」の仇名
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所在地:
河川公園内・碑の里

貞心尼「蓮の露」より

ある時 与板の里へわたらせ給ふとて友どちのもとより知らせたりければ急ぎまうでけるに明日ははや異方(ことかた)へわたり給ふよし人々なごりをしみて物語り聞えかはしつ打ちとけて遊びけるが中に (以下碑文)
 

君は色黒く衣も黒ければ今よりからすとこそ   

申さめと言いければ実(げ)によく我には   

ふさいたる名にこそと打笑ひ給ひながら   

いづこへもたちてをゆかむあすよりは   

からすとてふ名をひとのつくれば   

とのたまえければ              貞   


やまがらすさとにいゆかば子がらすも   

いざなひてゆけはねよはくとも

 

ひとが、「あなたは日焼けで色も黒く、その上着ている衣まで黒いから、これからはあなたのことをからすと呼ぶことにしましょう」という言葉を受けて、「ほんとうにからすと言う名前は私にとってふさわしい。明日からはどこへでも飛んで行こう」と。それに対して、貞心尼は「あなたが里に行くとおっしゃるのなら私も連れていってください。私は子ガラスで羽が弱いとは言うものの」というのが碑文の大意であろう。