宛名のない手紙
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所在地:
河川公園内・碑の里

此人一夜御とめ可被候   良寛      

(この人一夜御とめ下さるべく候 )

この手紙は、与板・大坂屋の椀の包み紙の中から発見されたという。

ある日のこと。良寛は道でひとりのみすぼらしい身なりをした旅人に出会いました。旅人は良寛にたずねました。「この辺に宿はないでしょうか。どうも体の具合が悪いので、泊めてもらえるところがあったら、休みたいと思いますので・・・」

それを聞くと、良寛はたいそう気の毒になりました。そこで、良寛は腰から矢立てを抜き取り、懐から紙を取り出して、その紙に書いたのが上記文言です。

良寛は、それを旅人に渡して、言いました。「この手紙を持っていって、近いところで泊めてもらいなされ」

旅人は大変喜びましたが、宛名がないことに気がついてたずねました。すると、良寛は、「アハハハ。いや、いかにもそのとおりじゃ。だが、宛名がないから、かえって都合がよいのさ。宛名があると一軒だけしか行けないが、宛名がないとどこへでも行ける」と。

本当は、良寛の署名があるので、どこでも泊めてくれるのであろうが、もしものことを考えた良寛の知恵と優しさが伺える手紙である。